9月の建替えを前に、今の姿を記憶に留めようという人たちが集まるホテルオークラ本館。
ラ・シェーヌ・デ・ロティスール協会によるオーキッドルームの名残を惜しむ会に、会員であるお友達がご招待くださった。
有難き幸せ。
恐縮至極ながら、ウキウキと。
氷細工も、さすが。
花を入れているのではなく、彫刻し、色を流し込んでから埋めているのだそう。
美しく威厳のある器やカトラリー。
和と洋の組み合わせとその配分が、ホテルオークラの一貫した美意識に満たされていて、ため息が出る。
G.H.マムのコルドン・ルージュで乾杯。
白鳥を模した小さなシューにはキャヴィア。
海の幸のテリーヌ、ロワイヤル風。
エルヴェ・ケルランのマコン・ウシジィ 2009。
冷製コンソメ、パリ・ソワール。
長時間かけて取られたダブルコンソメのジュレは濃厚で、おだやかでもある。
舌平目のグラタン、ボンファン風。
レ・ヴァン・ド・ヴィエンヌのコート・デュ・ローヌ・ブラン、レ・ローレル 2013。
ロゼシャンパンのシャーベット。
和牛フィレ肉のポワレ、グルメ風。
シャトー・レスパール 2010。
この日の料理は50年前のレシピを再現した王道のフランス料理。
ソースを丁寧に作り、きっちりと手間をかけ、素材を活かしつつも料理として別次元に昇華させている。
調理を施さないことを素材を活かしたという体で提案することが多くなっているのを寂しく感じていたから、フランス料理とはかくあるべしと嬉しくいただいた。
伝統的な料理を重いというが、今回いただいた料理たちは、しっかりとした満足感をもたらしつつ、軽やかなのだ。
手をかけた料理は、往々にしてそういうものだと思う。
デザートはフランベされて。
ノルウェー風オムレツ、フランベコニャック。
2種類のアイスをメレンゲで包んでから、コニャックでフランベ。
シャトー・ドリニャックのピノ・デ・シャラント。
プチフール。
この空間でお食事をいただくは、これが最後だろう。
名残惜しいし、文化遺産として残してほしいと思う。
とはいえ、入れ物が変わろうとも、ホテルオークラのこの存在感は失われないだろうとも思う。
働く人たちは変わらないし、このホテルを愛して通い続ける人たちがいるから。
何十年もここで食事をし、滞在し、人生の折に触れて利用してきた方々の話をうかがい、少しほっとした。
貴重な機会をありがとうございました。